「生成AIを使わせたいけれど、情報が漏れないか不安」。そんな管理者の方へ、結論からお伝えします。必要なのは分厚い規程ではなく、A4一枚に収まる5項目です。この記事では、最初に決める5項目、現場が守れないNG文とOK文への書き換え、30分でたたき台を作る手順、施行後に育てる運用までを実務目線でまとめました。

ETERNALd.c.tは「専門用語より、中学生にも伝わる言葉で説明する」を大切にしています。ルール文書そのものも、同じ考え方で作るのが一番の近道です。

生成AIの社内ルールは「禁止」ではなく「安全に使わせる」ために作る

ルールがない会社で実際に起きていること

ルールがない会社は「誰も使っていない会社」ではありません。多くの場合、社員それぞれが自分の判断で、見積書の文面や顧客からのメールをそのまま貼り付けて要約させています。問題は無法状態そのものより、会社から何も見えていない状態にあります。

全面禁止が一番危ない理由

「禁止」と通達を出すと、利用はなくなりません。会社のPCから、個人アカウント・個人スマホへ移動するだけです。こうなると何を入力したかを会社は把握できず、問題が起きても気づくのが最後になります。禁止は、リスクを消すのではなく見えない場所へ押し込む行為だと考えてください。

中小企業に大企業の規程をそのまま持ち込まなくていい

法務部も情報システム部門もない会社で、数十ページの規程を作っても読まれません。目指すゴールは「完璧な規程の完成」ではなく、社員が迷ったときに開ける一枚がある状態です。

顧客情報をAIに入力しようとして手が止まるさなと、声をかける代表カズト

ルールを作る前に:すでに使われている現状を、怒らずに可視化する

ゼロから許可基準を考えるより、今どう使われているかを知ってから作るほうが早く、実態にも合います。おすすめは無記名アンケートで次の3つを聞くことです。

  1. どのツールを使っていますか(会社契約/個人アカウント/使っていない)
  2. どんな作業に使っていますか
  3. どんな情報を入力したことがありますか

このとき、「過去の利用は一切咎めません。目的は犯人探しではなく、安全に使えるようにすることです」と先に宣言してください。ここで責任を追及すると、以後の報告フローも機能しなくなります。

集まった用途を「推奨/条件付き可/禁止」にざっくり仕分けすれば、それがそのままルールの材料になります。

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最初に決める5項目|A4一枚に収める社内ルールの骨子

項目は増えるほど読まれません。10項目を誰も覚えていない状態より、5項目を全員が言える状態のほうが安全です。

①対象範囲:誰に適用するか

社員だけでなく、パート・アルバイト・業務委託・制作パートナーまで明記します。小規模な会社ほど外部人材の比率が高く、ここが抜けると穴になります。発注書や契約書にも「当社の生成AI利用ルールに従う」と一行足しておくと確実です。

書き方例:このルールは、当社の業務に関わるすべての人(社員・パート・業務委託・外注先)に適用します。

②使ってよいツールとアカウント

原則は会社契約アカウントです。あわせて「入力したデータを学習に使わせない設定」になっているかを確認します。設定画面の場所はツール側の更新で変わるため、手順を書き込むより確認する担当者と確認時期を決めて書くほうが長持ちします。

書き方例:業務で使うのは会社が契約した〇〇のみ。設定は総務の〇〇が四半期ごとに確認します。

③入力してはいけない情報:3区分で線を引く

区分内容具体例
A:絶対に入れない他人から預かった情報・鍵になる情報顧客の氏名・住所・電話番号・メール、社員の個人情報、パスワードやAPIキー、取引先から預かった未公開資料
B:加工すれば可社名や数字を伏せれば相談できる固有名詞を伏せた社内相談、数値をダミーに置き換えた試算
C:自由に使ってよい公開済み・自作のもの公式サイトの公開情報、自分で書いた下書き、一般的な調べもの

④出力の扱い:そのまま出さない

対外に出る文章・資料は、必ず人の目を通します。確認は2点セットです。事実確認(数字・固有名詞・法令)と権利確認(画像や文章をそのまま公開物に使ってよいか)。

⑤困ったときの相談先と報告フロー

「判断に迷ったら、止めて聞く」先を、役職名や担当者名で具体的に書きます。ETERNALd.c.tは「丸投げにさせない、置き去りにしない」を約束の一つに置いていますが、社内ルールも同じで、聞ける相手がいない仕組みは必ず形骸化します。

書き方例:迷ったら手を止めて、社内チャットで〇〇に聞いてください。報告した人を責めることはありません。

NG文とOK文の書き換えをホワイトボードで説明する代表カズトとメモを取るさな

ここが差がつく|現場が守れないルール文のNG例とOK例

規程っぽい言葉は、読んだ人を「自分の場合はどっちだろう」で止めてしまいます。止まった人は、結局こっそり自己判断します。曖昧さは判断停止を生む、と覚えてください。

NG文(よくある書き方)OK文(現場が動ける書き方)
機密情報の取扱いには十分留意することお客様の名前・住所・電話番号・メールアドレスは、AIの入力欄に貼らない
生成AIの利用は必要最小限にとどめる議事録の要約、文章のたたき台づくり、調べものの下書きには使ってよい
関係部署の承認を得たうえで使用すること迷ったら社内チャットで〇〇に聞く(当日中に返答します)
誤りが含まれる可能性に留意する数字・会社名・法律の話が出てきたら、元の資料か公式サイトで一つずつ確かめてから使う

書き換えの3原則はシンプルです。

  1. 誰がやるのか主語を書く
  2. 「機密情報」などの総称を、自社の実物名に開く(顧客名簿、見積の単価表、など)
  3. 「留意する」「適切に」ではなく動作で書く(貼らない、確かめる、聞く)

AIを毎日使っている側から見た、ヒヤリとしやすい場面

ETERNALd.c.tでは、AI導入支援のほか、AIキャラクター制作やホームページ制作、ライバー事務所での配信分析にAIを日常的に使っています。使う側として、危ういのはいつも同じ場面です。

  • 相談内容をそのまま貼りたくなる瞬間:面談でのやりとりを要約させたくなりますが、人名・所属・連絡先は落としてから。習慣にしないと、急いでいる日に必ず崩れます。
  • 制作で権利確認を飛ばす瞬間:アイコンやサムネイル、ヘッダーの制作支援では、出てきたものをそのまま公開物に使ってよいかの確認を工程に組み込んでいます。
  • 数字を疑わずに使う瞬間:配信分析で「伸びる時間帯」「刺さる企画」を見える化するときも、AIの要約をそのまま結論にせず、元データに戻って突き合わせます。

ヒヤリは悪意ではなく、急いでいるときに起きます。だからこそ個人の注意力ではなく、ルール文と手順で防ぐ設計にします。

30分でたたき台を作る進め方

兼任の担当者が1〜2週間かけて完成版を作る前提は、現実的ではありません。まず30分で初版を出し、運用しながら育てましょう。参加者は決裁できる人+実際に使っている人の最低2名。使っていない人だけで作ると、現場感のないルールになります。

  • 事前準備(5分):アンケート結果を1枚にまとめる
  • ステップ1(10分):使ってよい業務を3つ挙げる(禁止から書かないのがコツ。使ってよいことを先に決めると、残りが自動的に「要相談」になります)
  • ステップ2(10分):区分Aに入る情報を、自社の実物名で5つ書く
  • ステップ3(5分):相談先と、次の見直し日を決める

完成したら、必ず「試行版・〇月〇日まで」と書いて配ります。期限があると現場から意見が出やすく、修正も心理的に楽になります。配り方も決めておきましょう。全員が見る場所に置き、説明は15分。読み上げて終わりではなく、「この資料はAIに入れていいと思う?」と一つだけ質問を投げて反応を見ます。

30分でAI社内ルールのたたき台を作る代表カズトとさなのミーティング風景

作って終わりにしない|質問を拾ってルールを育てる運用

施行後は必ず「これはAIに入れていいですか?」という質問が出ます。その場で答えて終わらせず、記録してください。

質問ログは3列で十分です。「質問/回答/ルールに追記したか」。同じ質問が2回来たら本文に反映する、という基準を置くだけで機能します。

  • 月1回・15分、質問ログを見るだけの軽い会を置く
  • 改訂したら版数と日付を書き換え、変更点だけを3行で共有する(全文再送は読まれません)
  • 定着のサインは「質問が出てくること」。質問ゼロは理解ではなく、無関心か、こっそり使っている状態かもしれません

ツールを渡して終わり、納品して終わりにしない。これは私たちが仕事で大切にしている姿勢ですが、社内ルールにもそのまま当てはまります。

よくある質問(生成AIの社内ルール)

Q. 無料版は禁止にすべきですか?
A. 一律禁止だけが答えではありません。判断軸は「入力データの学習設定」と「契約主体が会社か個人か」。無料版を認めるなら、入力できる情報を区分Cのみに絞る運用も選べます。

Q. 公的な雛形をそのまま使ってはダメですか?
A. 出発点としては有用です。ただし雛形の「機密情報」「関係部署」を、自社の業務名・情報名に置き換えないと現場では使えません。翻訳作業こそが本体だと考えてください。

Q. 少人数でも文書にする必要はありますか?
A. 口約束は引き継げません。人が増えたとき、取引先に説明を求められたときに、一枚あるかどうかで対応が変わります。

Q. 外注先やアルバイトにはどう伝えますか?
A. 発注時に一文添え、同じA4一枚を共有するのが現実的です。別の文書を作る必要はありません。

Q. ルールを破った人にはどう対応すべきですか?
A. 懲罰から入ると、次から報告されなくなります。まず報告してくれたことを評価し、同じことが起きない手順に直すほうが、結果として被害は小さくなります。

相談だけでも大丈夫です

大事なのは「ルールを作ること」より「使いながら育てること」です。とはいえ、最初の一歩は誰にとっても勇気がいります。だからこそ私たちは、伴走者でありたいと考えています。

ETERNALd.c.t(大阪市中央区・代表 畑和寿)は、AI導入支援を行いながら、自社でも制作と分析の実務にAIを使っています。自社向けのたたき台づくりや、5項目の埋め方を一緒に考えることもできます。

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